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きぎす

きぎすとは「雉」そう、あの鳥のキジです。いったいに地唄の歌詞は最初の部分がとても印象的で素敵なものが多いのですが、これも「きぎす鳴く~」から始まり、そこで一気に野山の香りと雉の鳴き声の世界に引き込まれます。

 

有名な歌舞伎「双蝶々曲輪日記」より与五郎と吾妻の道行を題材にした地唄です。上方らしい柔らかい雰囲気の中にも吾妻の与五郎の男気に惚れぬいた強さを表現して頂きたいと思います。一見簡単そうに見えて、「やけののきぎす」と言われる情愛の厚さを表現し、しかも情に流され過ぎず淡々と舞わなければならない、難しい曲です。

 

花崎流では出だしはなく、途中の「春にも育つ花誘う」から始まります。

きぎす鳴く、野辺の若草摘み捨てられて、余所の嫁菜といつかさて、こがれ焦がるゝ苦界の船の寄る辺定めぬ身はかげろふの、吾妻が顔も見忘れて、うつゝないぞやこれなウ男、アレ虫さへも番ひ離れぬ上げ羽の蝶、われ/\とても二人づれ、すいた同士のなか/\に春にもそだつ花誘ふ、菜種の蝶に花知らず、蝶は菜種の味知らず、知らず、知られぬ仲ならば、浮かれまいものさりとては、そなたの世話になりふりも、わが身の末のはなれ駒、長き夜すがら引しめて、昔語りの飛鳥川。

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